太平洋奇跡の作戦 キスカ 東宝(昭和40年:1965)
監督
 丸山誠治

特撮監督
 円谷英二

音楽
 團伊玖磨

出演
 三船敏郎
 山村聡
 中丸忠雄
 藤田進
 佐藤充
 志村喬
 田崎潤
 西村晃
 児玉清
 この映画『太平洋奇跡の作戦キスカ』は、大東亜戦争(アメリカの呼称は太平洋戦争であるが、日本の正式な呼称は大東亜戦争である)における日本海軍によるキスカ島守備隊の救出作戦を描いた作品である。戦争をテーマとした映画であるが、戦闘場面はほとんどなく、アメリカの爆撃機等によるキスカ島の爆撃や、霧が立ち込める海上でのアメリカ海軍の砲撃場面程度である。映画は、劣勢となり艦艇も不足がちになった日本海軍が如何にしてキスカ島守備隊を救出するかに全編が費やされる。

 映画の冒頭において、キスカ島守備隊の絶望的な、しかし決して自暴自棄にはなっていない状況が示される。クレジット・タイトルの背景に、例えば兵士達が輪になって行進しながら、たぶん歌を高らかに歌っているようなシーンがある。これによって、絶望的な戦いの中でも兵士達が自分達の士気を鼓舞しようとしていることがわかるのである。
 そしてスピーカから、「本日、入港予定のイ号7潜水艦は故国日本への最後の郵便である。・・・・・」という放送が流れ、先任参謀が直接各部隊を回って郵便物を集めてくるのだが、ある部隊では以下のような会話がなされる。

 ある兵士;「北高地航空隊、720通お願いします」

 先任参謀;「ああ、随分多いな」

 ある兵士;「はっ、平均一人3通は書いたようであります。これで全員思い残すことはありません。」


 この会話から、日本軍の置かれた状況が理解できるし、このような状況でも兵士達が戦う決意をしていることが伝わってくるのである。こうしたキスカ守備隊を、日本帝国海軍第五艦隊司令官川島中将(山村聡)は、軍令部参謀の反対を押し切り救出することを提言する。ネット上でどなたかが「当時の戦況にあってこの救出を決断するということそのものが奇跡である」と書いているのを読んだことがあるが、正にその通りであり、この決断から”奇跡の作戦”が始まったのである。川島中将は、南方戦線に行っている同期の大村少将(三船敏郎)を第一水雷戦隊司令官に任命し、彼にすべてを託す。こうして、大村少将の指揮の下に” 太平洋奇跡の作戦”が開始されるのである。

 映画は、大村少将によるキスカ島守備隊を如何にして救出するかを、見事な緊張感を最後まで維持しながら描いており、見ている我々も、公開当時実写ではないかとも言われた見事な特撮もあって、出演者と共に駆逐艦に乗り、霧の中を彷徨い、激流を操舵しているように感じ、最後には守備隊全員を救出し、共にその喜びに浸ってしまうのである。これこそ映画というべきであろう。

 よく指摘されるように、この映画の出演者は全員男優(出演陣をみれば分かるように、名優ぞろいである)であり、女優さんが一人も出てこない。それは、この映画の主題が、ただ一点”キスカ島の守備隊をいかにして救出するか”に絞られているためである。もしこの映画に女優さんを出演させ、守備隊の誰かの恋人か、あるいは家族でも演じさせたりしたら、全編に渡る緩みない緊張感を維持しうる脚本にはなり得なかったように思われる。

 最近の脚本家は、このように割り切り、主題を一つに絞ったシナリオを書けないように思われてならないのである。1973年に製作された『日本沈没』とリメイクされた草なぎ剛の「日本沈没」を比較すると極めてつまらなく駄作と感じたのは、草なぎ版の『日本沈没』が、草なぎ剛と柴咲コウとの恋愛なども絡めてしまい、沈没する日本を如何に救うかということに主題を絞れなかったためであろう。

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