太平洋ひとりぼっち
監督
 藪下泰司

脚本
 藪下泰司

声の出演
 森繁久彌
 宮城 まり子
 映画の冒頭、森繁久彌のナレーションが入る。「これは不思議な物語です。しかし、それでいて優しい物語なのです」と。この言葉が、この映画『白蛇伝』を端的に表しているのである。

 『白蛇伝』は、いつの頃か昔々の中国の物語である。少年許仙は、あるとき市場で売られていた白蛇を買ってきた。「見世物になっていて可愛そうに」と思ったのである。しかし周囲の無理解な大人たちは、気持ちが悪いから捨ててしまえと許仙に迫まり、やむを得ず許仙は白蛇を野原に捨てるのであった。

 それから何年かが過ぎた頃、西湖一帯が何百年に一度という大嵐に見舞われ、そして嵐が収まると、どこからともなく美しい娘が現れたのである。そう、この娘こそ、許仙が嘗て市場から買ってきた白蛇の精が、優しかった許仙に会いたくて人間の姿となって現れたのであり、名を白娘というのであった。ところがここに、法海和尚なる高僧がいて、彼は自分の水晶玉に現れた変異によって、なんらかの妖怪変化がこの人間界に現れたことを察知してしまうのである。

 ある日のこと、若者に成長した許仙が笛を吹いていると、それに答えるように胡弓の調べがどこからともなく聞こえて来て、許仙は思わずその胡弓の調べを追いかけていくと、そこに、あの美しい白娘を見つけるのであった。そして、二人はたちまち恋に落ち、白娘の妖術によって廃屋から花が咲き乱れる美しい建物に変わった屋敷で、楽しい時を過ごすのである。しかし、許仙の友達であるパンダとミニー、そして白娘のお付である魚の精の小青がこの屋敷の中で遊んでいると、装飾の龍が突然動き出し、パンダとミニー、そして小青を乗せて夜空を駆け昇り、政府の宝物殿に落ちてしまった。そしてそこで少青は、美しい宝石を見つけて拾い、許仙と白娘に与えてしまうのだが、そのため許仙は宝石を盗んだとの嫌疑を受けて、蘇州に追放されてしまうであった。

 許仙が蘇州に流されると、白娘も許仙を追って蘇州に行くのだが、そこには許仙の身を案じた法海和尚も来ていたため、白娘は妖術を以って法海和尚に戦い挑むのであるが、破れてしまい、白蛇の本性を現わしてしまうのであった。白蛇の姿に戻った白娘は、「自分のこんなあさましい姿を、愛しい許仙には見せられない」と、最後の力をふりしぼって人間の白娘の姿となり、許仙の前から消えようとするのであった。そのため白娘を捜してきた許仙が、幻の白娘を追ってまさに捕まえようとしたとき、崖から転落して死んでしまうのである。

 許仙の命を蘇らせるためには、遥かな宇宙に住んでいる龍王に頼るしかないと悟った白娘は、自分を犠牲にして許仙の命を蘇らせてくれるようにと龍王に懇願する。龍王は、白娘から妖術を使う力を奪い、永遠の生命力を持たない人間とすることを条件に、命を蘇らせることができる花を白娘に授けけるのである。

 こうして人間となった白娘は、小青の助けを借りて、この花を孤島にある法海和尚の寺に引き取られた許仙に届けようとするであった。しかしそれとは知らない法海和尚は、再び法力を使って海を荒れさせ、白娘が島に来るのを妨げるのだが、白娘は、動物たちの助けを借りてその妨害を退け、許仙に花を届けるのであった。そして、ついにこの花の力によって蘇った許仙は、今では本当の人間となった白娘と新しく旅立つのであった。

 本作品は、東映が満を持して製作・発表した日本初の本格的カラー長編アニメ映画であり、その後の日本アニメ映画に多大な影響を与えた記念碑的な作品である。東映はこの後、『少年猿飛佐助』、『安寿と厨子王丸』等を始め多くのアニメを製作したが、日本の本格的なアニメ映画の始まりは、ひとえにこの『白蛇伝』に帰すことができよう。この映画の製作に参加した、あるいはこの映画を見た人々の中から、多くの才能が巣立っていったのであり、この作品の製作を決断した東映は誠に賞賛に値するであろう。なおこの作品では、ナレーションや登場人物の声を、森繁久彌と宮城まり子さんのお二人のみが担当している。その名人芸も見もの(聞きもの?)である。

 以下に他の方の感想があります。