銀座の恋の物語 日活(昭和37年:1962)
監督  
 蔵原惟繕

出演     
 石原裕次郎
 浅丘るり子
 ジェリー藤尾
 和泉雅子
 この映画は、石原裕次郎のヒット曲であり、いまでもカラオケの定番として歌われる『銀座の恋の物語』をベースに作られた映画だったと記憶している。石原裕次郎演じる若く貧しいが才能ある画家志望の青年、伴次郎と、浅丘ルリ子さん演じるブティックのお針子さん、久子(通称チャコ)の恋の物語が銀座を背景に描かれる。

 伴次郎は、音楽家志望の友人、宮本(ジェリー藤尾)と一緒に安アパートに暮らしながら夢を追っている。次郎は、ある出版社からその才能を認められて入社を勧められているが、自分の描きたい絵を描くため、それを断っている。そのため将来の生活への不安から久子と次郎は衝突してしまうのだが、次郎は出版社への入社を決意し、二人の新しい生活を始めることを決意する。そして信州に住む次郎の母親に二人で会いにいくことにする。
 二人は新宿駅で待ち合わせるが、久子は約束の時間をすぎても現れなかった。久子は、急な仕事が入り、それを仕上げてから駅に急いだため交通事故にあってしまったのである。次郎は必死に捜索するがどうしても捜しだすことができないのだった。  

 一方、宮本は貧しさからピアノを失い、また仕事もないなど世間に認められない焦りから、自暴自棄になり、夢を捨て金のために悪の道に走っていく。  

 次郎は仕事をしながら、久子を探し続けていたが、そんなある日、偶然流れてきたデパートのアナウンスの声が久子の声であることに気づき、久子と再会を果たすのだった。しかし、彼女は交通事故がもとで記憶を失っていた。それから記憶を取り戻すためのふたりの懸命な闘いが始まることになる。久子が記憶を取り戻していく過程の演出がすばらしく、二人の懸命さが伝わってくる。そしてその記憶を取り戻すきっかけが、”銀座の恋の物語”の曲と、一つの音が出ない壊れたおもちゃのピアノという憎い演出なのである。
 以上がこの映画のおおよそのストーリであるが、彼ら二人を取り巻く人々(焼き芋屋のおばさん(清川虹子さん)、たこ焼き屋のおじさん、和泉雅子さん演じるお針子さん)がいい味を出しており、また古い銀座の雰囲気がこの映画をセンスあふれる上質なものにしている。また、信州に行くために新宿で待ち合わせをするのだが、この時お互いにプレゼントをひそかに用意する。次郎は、自分が一番大切にしていた久子の肖像画を売って、そのお金で久子のためにバッグを買う。一方、久子は次郎がその肖像画を入れる額を欲しがっていたのを知っていたのでその額う買うというような話(なかなか思い出せなかったのだが、オー・ヘンリーの『賢者の贈り物』のアレンジであろう)をさりげなく入れている。

 石原裕次郎は画家を演じているが、前に小樽にある石原裕次郎記念館に行ったときに裕次郎が小学生の時に描いたという絵を見たように記憶している。この絵は裕次郎の才能の一端を示しているように思われ、その絵をみたせいかもしれないが新進画家という役が非常に合っているようにも思われた。
たぶん多くのひとは石原裕次郎主演で歌をベースにしたということから、この映画に対してあまり期待しないのかもしれない。実際このこのサイトでしばしば参考にしている佐藤忠雄の大著「日本映画史」においても、この映画のそのものの評はなく、”浅丘るり子が役者として成長したと”いうような、私的にはどうでもいいようなことしか書いてない。しかし、この映画はいま見直しても十分新しく、心に残る映画の一つである。

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