風林火山 三船プロダクション(昭和44年:1969)
監督
 稲垣浩  

出演
 三船敏郎
 中村錦之助
 石原裕次郎
 中村翫右衛門
 中村嘉葎雄
 田村正和
 佐久間良子
 この映画『風林火山』は、群雄割拠の戦国時代、軍師山本勘助が武田家に仕えてから川中島の戦いにおいて命を落とすまでを描いている。山本勘助を三船敏郎、武田信玄を中村錦之助、そして上杉謙信を石原裕次郎がそれぞれ演じたが、1960年代後半は、隆盛を極めた映画産業がTV等の普及により斜陽化してきた頃であり、大スターが集結した大作映画を作って映画の復興が試みられていたのである。この映画は2時間45分を超える大作で、画面いっぱいに人馬が疾駆する様は、まさに戦国絵巻さながらであり、このようなスペクタクルを見るだけでも十分楽しめるものであろう。

 今川家の領地に居住していた山本勘助は、風林火山の旗のもとに勢力を伸ばしつつある武田晴信(後の信玄)に仕官しようとしていた。たまたま今川家に来ていた武田の重臣板垣信方(中村翫右衛門)に対して暗殺劇を謀り、板垣を助けて恩を売り食客となり、諏訪攻めを進言したことで武田晴信に認められて家臣になる。

 天文十三年三月、晴信は二万の軍勢を率いて信濃の諏訪郡に進出するが、諏訪頼茂が従属を誓うことを条件に勘助は和議を唱え、晴信は和議の使者を勘助に任せ、勘助はこの役目を無事果たすのである。しかし和議成立後、頼茂が頻繁に晴信を訪問することに疑念を感じた勘助は、頼茂を斬ってしまう。翌天文14年正月、晴信は諏訪攻略の軍を動かすが、主を失った諏訪軍はあっけなく敗れてしまうのである。

 この諏訪攻略において高島城を攻め落とし、自害を強要されていた諏訪頼茂の息女由布姫(佐久間良子さん)を助けるのであるが、由布姫は「父をだまし討ちにした」と激しく勘助を詰るのであった。こうして、由布姫は囚われの身となって甲斐に迎えられ、晴信の側室となるのである。諏訪を討った武田勢は、そこを拠点に信濃攻略を開始し、破竹の勢いで周辺を勢力下に収めていき、天文十五年三月には、村上義清の属城である信州の戸石城を攻め落とす。この戸石城攻略の間に由布姫が和子(後の勝頼)を産む。

 天文十七年、晴信は再び上田原で村上義清と戦かった。この合戦は、義清の奮戦によって、勘助の後ろ盾でもあった板垣信方が討ち死にし、武田の本陣も危うくなるほど苦戦するものの、どうにか勝ちを得るのであった。信濃を攻略したことで、いよいよ越後の虎・長尾景虎と対決することになる。天文二十年二月、晴信と勘助はともに出家し、晴信は名を信玄と改めた。一方長尾景虎も上杉家を継ぎ、出家して上杉謙信と名乗るのである。四年後の天文二十四年二月、上杉謙信が信濃に進発し、これに対抗して武田信玄も信州海野平に陣をはる。ここに初めて武田信玄と上杉謙信とが直接見えたのであったが、このときは謙信は何事もなかったかのように引き上げる。

 上杉謙信との戦いが何度か繰り返されるている間、由布姫はこの世を去ってしまう。勘助の望みは、由布姫の子武田勝頼が元服し初陣を飾ることだったのである。永禄四年八月、ついに上杉謙信は春日山上を発し一万三千の大軍を率いて川中島に進撃し、これに対して武田信玄は一万八千の軍勢を率いて川中島の海津城に進出した。世に名高い川中島の合戦が始まろうとしているのである。

 勘助は、謙信が布陣している妻女山を、板垣信里(中村嘉葎雄)に主力を率いて攻撃させて敵を追い落とし、敵が海津城攻めに向かうところを八幡原に布陣した旗本三千で横腹を突くという作戦をたてる。しかし、謙信はこの作戦を事前に察知し、前夜のうちに軍勢を八幡原の正面に移動し、霧が明けるとともに武田の本営に攻め込んできた。このため武田勢は、武田信繁(田村正和)以下奮戦するも防戦一方に追い込まれ、旗本を残して総勢が繰り出さざるを得ない状況に追い込まれた。

 勘助はこの危機に、自ら配下を率いて謙信の本陣を目がけて突撃するのだが、謙信は影武者6人を率いて武田の本陣に襲い掛かり、信玄に直接切りつけるという状況になってしまった。勘助も奮戦するもついに討ち死してしまい、武田軍が壊滅寸前になったところに、妻女山を攻撃した坂垣信里の主力が到着するのだった。

 以上が、大作映画『風林火山』のおおよそのストーリである。この映画は、戦国武将としての山本勘助の生き様を描くとともに、由布姫に対する心に秘めた愛の物語でもある。同じ稲垣浩監督で、三船が主演した『無法松の一生 』においては、高峰秀子さん演ずる吉岡未亡人に対する無法松の秘めた愛が描かれたが、本作では、勘助の由布姫に対する秘めた愛が描かれているのである。この二人の秘めた心を、三船は無骨なまでに抑えて演じており、やはり名優だったのだなと思わせるのである。
 中村錦之助の武田信玄も、三船に対して引けをとらず堂々としており、若々しい晴信時代から、重厚な信玄までを見事に演じている。特筆すべきは石原裕次郎の上杉謙信である。出演している時間はたぶん数分もなく、そしてセリフもないのだが、初めて武田信玄と川中島で見えた時から、最後の影武者6人を率いて武田の本陣に襲い掛かかった時まで、十分な存在感を示していたといえよう。

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