哀愁 アメリカ(1940)
監督
 マービン・ルロイ

出演
 ビビアン・リー
 ロバート・テイラー
この映画は、悲恋、悲劇である。この映画を観た後の切なさは、胸がいたくなるほどである。ビビアン・リーが自分の出演作で最も好きな映画が、この哀愁である。私の持っているDVDの<作品紹介>を以下に引用するが、映画の紹介としては傑出しているように思われる。

 第一次世界大戦下のロンドン、空襲のときウォータールー橋で出会う運命の二人、英国将校のロイと踊り子のマイラの悲恋を描いた恋愛映画の不朽の名作。この二人に誰もが納得の美男美女、ロバート・ティラーとヴィヴィアン・リーを配し、戦火の下、運命のいたずらによって悲劇的なラストを迎えてしまう美しくも悲しい恋物語である。マービン・ルロイ監督のつむぎだす美しい場面の数々は観る者を魅了する傑作になっている。オーソドックスな作りがかえっていつまでも古さを感じさせない永遠の恋愛映画といえよう。

 この映画を観終わった後で、”もしあのとき、ロイの上官が自分の決断で二人の結婚を許可していたら、午後3時前に教会にいけたのに・・・”とか、”午後3時以降の結婚を認めない法律がなければ、・・・”とか、”もしあのとき、喫茶店のウエイトレスがマイラに新聞さえ渡さなければ、・・・”とか、その他の様々な運命のいたずらさえ無ければ、このような悲劇が起こらなかったのにと悔やまれてしまうのである。それほどにこの映画の悲劇に同化している自分を発見するのである。

 ビビアン・リーは、前年の「風と共に去りぬ」でアカデミー主演女優を得ているが、この映画でも、運命に翻弄される女性を見事に演じている。ロイから結婚を申し込まれたときの心の輝き、結婚が上官から許可されるかどうかを待つ間の不安、最後の橋の上で放心したような表情からある決意をするまで等、様々な場面での心の演技がすばらしい。最後の路上のお守りが、マイラの悲劇とロイの悲しみをいっそう募らせるが、それを握り締めるロイに救われるような気がするのである。
 それにしてもこの時代の女優さん達(本作品のヴィヴィアン・リーやイングリット・バーグマン)の気品と美しさは、たぶんその時代の雰囲気が作り上げたものであり、時代の持つものが変わってしまった現代の女優さんには、求めても求められないものであろう。

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