監督
丸山誠治
特技監督
円谷英二
出演
三船敏郎
加山雄三
仲代達也
藤田進
笠知衆
松本幸四郎
辰巳柳太郎
佐藤允 |
日本の自衛隊の観閲式が毎年行われているが、この観閲式のとき海上自衛隊員の行進がくると、招待されている外国のある海軍武官が、起立して敬礼している
YouTubeの動画をみたことがある。これは、この映画『日本海大海戦』の主人公である東郷平八郎がロシアのバルチック艦隊に対して圧倒的な勝利を収めた大日本帝国海軍に対する尊敬を篭めた敬礼であると見られている。
映画『日本海大海戦』は、日露戦争における日本海海戦(海外では、”対馬沖海戦”という)が、東郷平八郎の指揮の下に、如何にしてバルチック艦隊を撃滅したかを中心として描いた映画である。まず、映画のタイトルが出る前に、当時の日本のおかれた状況が簡明に解説される。これによって、義和団事件を発端としてロシアが満州に勢力を伸ばし、このロシアの脅威に対して行った戦いが日露戦争であったことがわかる。
映画は、日露戦争における主要な海戦、すなわち仁川沖海戦、旅順港急襲作戦、旅順港閉塞作戦、常陸丸の悲劇、黄海海戦、さらに旅順攻略戦を描いたのち、最後に、本映画の主題である日本海海戦がかなり克明に、そして分かり易く描かれる。旅順港閉塞作戦に関しては、「杉野は何処(いずこ)、杉野は居ずや」と歌に歌われ、軍神となった広瀬少佐(加山雄三)、さらにヨーロッパで諜報活動を行った明石大佐(仲代達也)などの活躍も描かれる。
戦争を扱った映画の場合、私的には幾つかに分類されるような気がしている。例えば、悲壮感を強調した映画や、”日本軍は悪”という観点から描かれた映画、それからエンターティンメント的な要素を持った映画(勝新太郎の『兵隊やくざ』や、佐藤允の『独立愚連隊』)等がある。その他にも、様々な分類することができると考えられるが、この『日本海大海戦』は、比較的淡々と明治の軍人の有り様や、軍事作戦とその戦い振りを描いている映画である。
日露戦争の経緯やそれぞれの戦いの詳細については、ネット上にも数多くの記述があるので、それらを参照していただければよいわけで、この映画の見所は、
三船敏郎がどのような東郷平八郎を演じたかということと、円谷英二特技監督の特撮技術と思われる。
東郷平八郎の性格は、”寡黙でかつ荘重”と言われていたようであるが、三船は、実にこのような東郷を的確に演じているように思われる。映画の最後の場面において、明治神宮の参道をご夫人と歩んでいく場面があり、以下のようなナレーションが流れる。
−−−日本海海戦の大勝利の後、この人は何時も目を伏せ、少し腰をかがめて、見らるるを恐れ、聞かるるを恐れる如く見えたという。それは、戦いに召され、その戦いに勝って、真にものの恐れを知った人の姿ではないか。今、この人から滲み出るのは、まさに戦いに勝ったことを恐れる心である。戦争は、勝つことさえ恐ろしいことを知った人の心である。
黙々として恐れ、黙々として歩み、歴史を通り過ぎた人、その人の名は、東郷平八郎−−−
昭和天皇が、乃木希典(笠知衆)と東郷平八郎の印象を訪ねられて、東郷については「特に記憶がない」と話されたということであるが、晩年の東郷は、まさに上記のナレーションのように世を憚るような生活を送ったのであろう。
さて、この映画は1969年に公開されている。特技監督の円谷英二はその翌年の1970年に亡くなっており、この映画は円谷監督の最後の作品となっているが、まことに円谷特撮の見事な集大成の作品というべきであろう。特に、バルチック艦隊との決戦の特撮技術は見事であり、実際に、自分がその場で戦闘に参加しているかのようにさえ思われるほどのものである。
”憲法9条を守れば日本は平和を維持できる”という平和ボケした現在の日本は、たぶん当時のロシアの脅威を想像することはできないであろう。幕末以来、日本は外国からの侵略の脅威に晒され、実際に日本の領土の一部が占拠されたりしている。一例をあげると、ポサドニック号事件というものがあった。これは、ロシアのポサドニック号という軍艦が、1861年2月3日に突然対馬に上陸し、上陸した海岸付近を占領し、兵隊たちの宿舎を勝手に建てたりした事件である。この事件は、幸いにも勝海舟の薄氷を踏むような外交策略により事なきを得たのであるが、このようなロシアの脅威は当然のことながら明治政府にも受けつがれていたであろうし、そもそも明治維新は、このような外国の日本侵略の脅威に対抗するためのものであったのである。
この映画を見て、日本が置かれた歴史的な背景に思いを馳せ、現在の日本を取り巻く状況を考えると、当時のロシアが中国に変わっただけで、同じような危機に瀕していると考えてしまうのは、小生だけではないように思われるのである。
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