花と竜 日活(昭和43年:1968)、東映
『花と竜』
(日活 昭和36)
監督

 桝田利雄

脚本
 笠原和夫

出演
 石原裕次郎
 浅丘るり子
 芦田伸介
 岩崎加根子


『花と龍』
(東映 昭和40)
監督
 山下耕作

出演
 中村錦之助
 佐久間良子
 月形龍之介
 淡路恵子


『花と龍』
(東映 昭和44)
監督
 マキノ雅弘

出演
 高倉健
 星由里子
 若山富三郎
 藤純子
 火野葦平の『花と竜』を原作とする映画『花と竜(龍)』は、嘗ての日本の若者の共通の言葉でもあった、いわゆる「青雲の志」を抱いて裸一貫、四国の伊予から北九州に出てきた玉井金五郎が、石炭の荷揚げ人足のゴンゾーとなり、持ち前の腕と度胸を頼りに、玉井組を作るまでを描いている。

 その成長の過程の中で、後に妻となり金五郎を支えてくれるマンとの出会いや、侠客として有名な吉田磯吉親分との出会い、そして金五郎を邪魔する他の組との抗争などが描かれる。
 
 映画『花と竜』の主人公玉井金五郎のモデルは、芥川賞作家火野葦平の自分の父親そのもの(名前も同名)であり、またマンや吉田磯吉親分もまた実在の人物である。そうした背景を理解してこの映画を見れば、まさに明治という時代の息吹というものを感じることが出来るであろう。

 『花と竜』は何度も映画化されているが、ここでは日本映画界において一世を風靡した俳優、即ち石原裕次郎、中村錦之助、そして高倉健が玉井金五郎をそれぞれ演じている映画を取り上げている。

 これらの映画で重要な役割を演じるのが、金五郎と結婚することになるマンと吉田磯吉親分であるが、マンには浅丘ルリ子さん、佐久間良子さん、
星由里子さんが、また吉田磯吉親分に芦田伸介、月形龍之介、若山富三郎がそれぞれ配されている。

 これらの三作品は、基本的には原作『花と竜』に基いているが、当然のことながら映画的な面白さを加えるというような必要性からと思われる変更もされている。特にマキノ監督の『日本侠客伝 花と龍』では、博打の壷振りで刺青師でもあるお京役に藤純子さんが配され、ピストルをぶっ放さすシーンがあり、まさに緋牡丹のお竜さんを彷彿とさせてくれるのである。

 しかしながら、このように原作が同じでも異なる展開となっているとしても、いずれの映画でも、主題は”男の生き様”というものが根底に流れているのであろう。それは例えば、若山富三郎演じる吉田磯吉親分が金五郎に以下のように諭す場面である。

「・・・人間、裸一貫、自分が正しいと思う道にまっすぐに進んでいきない」

 若い時にこの映画を見れば、”自分が正しいと思う道にまっすぐ進んで行きたい!”と思うであろうし、歳月を重ねた今となっては、”自分は、自分が正しいと思う道をまっすぐに進んできたのだろうか?”と反省だけすることになるのかも知れないのである。

 このような映画は常にこうしたことを考えさせてくれるのであり、そして、たとえ自分の思い描く人生を進んでこれなかったとしても、映画の主人公になって、自分の描く人生を生きてきたような気になることも出来るのである。

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