シャレード アメリカ(1963)
監督
 スタリー・ドーネン  

出演
オードリー・ヘップバーン
ケーリー・グラント  
 この映画のタイトル『シャレード』とは、謎言葉というような意味であるが、このタイトル通り、この映画はスリルとサスペンスと、そしてロマンチックな要素も含んだオードリ・ヘップバーン主演の娯楽映画の傑作である。

 映画は、ヘップバーン映画とは切っても切り離せないヘンリー・マンシーニの音楽とともに、一人の男が列車から投げ落とされて殺されるシーンから始まる。この男は、ヘップバーン演じるレジーナの夫であり、その頃レジーナはスキー場でバカンスを楽しんでいた。そしてレジーナは、何も知らずにスキー場からパリの豪華なマンションに戻ってくるのだが、そこには全ての家財や衣服が競売に賭けられて売られ、跡形もなく無くなっていたのである。

 既にこのサイトでは、ヘップバーン主演のサスペンスの傑作中の傑作『暗くなるまで待って 』を紹介している。『暗くなるまで待って』は、アパートの一室を舞台とするシリアスなサスペンスドラマであったが、この『シャレード』は、パリを舞台とし、”コメディタッチな要素も含む洒落た”謎解きのサスペンスである。
 ”コメディタッチな要素も含む洒落た”という表現をしたが、それは例えば次のような会話から窺い知ることができよう。スキー場から帰ったレジーナが、夫の事故死を警察から知らされた後の警察の取調べのときの会話の一部である。

警部;  「あなたの夫はアメリカ人ですか?」
レジーナ;「スイス人」

警部;  「なるほど 仕事は?」
レジーナ;「無職よ」

警部;  「よほど財産が?」
レジーナ;「たぶん しかし、知らないわ」

警部;  「財産はどのくらい?」
レジーナ;「知らないわ」

警部;  「財産はどこに?」
レジーナ;「知らないわ」

警部;  「あなた以外にご親戚は?」
レジーナ;「知らないわ」

警部;  「おかしな話ですね」
レジーナ;「知っています。すみません」


 初めてこの映画を見たときには、可笑しさとともに”ヨーロッパには、こんな夫婦がいるの?”と思ったものだが、今では、この脚本のセンスに驚きを禁じえないのである。

 映画は、事故死した夫が家財一切を売却して得た25万ドルの行方を追って、スキー場で出会ったケーリー・グラント演じる謎の男や、レジーナの夫の第二次大戦中の戦友たちが入り乱れてスピーディに展開される。このサイトの映画紹介では、しばしばあらすじの概略を示すことが多いが、このような映画では未見の方にはネタばれになってしまうので、そのような野暮なことは避けることにする。

 是非とも、ジバンシーの衣装を身につけた美しいオードリーと、ヘンリー・マンシーニの美しい音楽に乗ってパリの街を25万ドルの行方を追い求め、そして最後には犯人に追われてパリの街を逃げ、地下鉄に乗り、追い詰められていただきたいものである。

 この映画は、まことに映画の面白さを堪能できる作品であるが、この映画の監督スタンリー・ドーネン監督は、『ローマの休日』でヘップバーンを世界に紹介し多くの人々を幸せをもたらしてくれたウィリアム・ワイラー監督と同様に3本のオードリー主演作(他には、『パリの恋人』、『いつも二人で』)を撮っている名手である。また、オードリ・ヘップバーンは、この映画で英国アカデミー賞イギリス女優賞を受賞していることを付言しておきたい。

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