奇跡の旅 アメリカ(1992)
監督
 デュウェイン・ダンハム

出演
 ゴールデン・レトリバー    (シャドウ)
 ヒマラヤン
  (サシー)
 アメリカン・ブルドッグ     (チャンス)
 この映画『奇跡の旅(Incredible Journey)』は、2匹の犬と一匹の猫の冒険の旅の物語である。このサイトでは、主に古典とも言えるような映画作品の私的な感想を紹介しているが、この映画は比較的新しい作品である。ただしこの映画は1963年に製作された名作『三匹荒野を行く』のリメイクであり、その意味ではやはり古典と言ってよいと思われる。

 ピーター、ホープ、ジェイミーの3人兄妹には、それぞれ仲良しの動物達がいた。即ち、ゴールデン・レトリバーのシャドウ、ヒマラヤンのサシー、アメリカン・ブルドッグのチャンスである。シャドウは老犬であるが、ピーターを愛し、沈着冷静で忠誠心が強く、サシーは気取り屋で気位が高い猫であった。一方、チャンスは子犬のころに捨てられ、野良犬収容所に入れられたという経験もあり、容易に人間を信ずることができないのであった。

 3人兄妹の母ローラ(キム・グレイスト)は大学の教授であるボブ(ロバート・ヘイズ)と再婚したのだが、ボブの仕事の都合でこれらの三匹は、シェラネヴァダ山脈で牧場を営むケイトにしばらく預けられることになったのである。ケイトが牛を牧草地に連れて行くため留守にしたとき、ピーターに何かあったのではないかと心配になったシャドウは、ピーター達の住む家を目指して遥かな荒野へと旅立っていくのである。そして、直ぐにサシーとチャンスがシャドウの後を追い、こうして3匹の家路への”奇跡の旅”が始まるのである。

 この旅で3匹は様々な危険や困難に遭遇する。例えば、グリズリーやピューマと出会ったり、サシーが川を渡ろうとして落ち、急流に飲まれて滝つぼに落下するものの研究者に助けられて九死に一生を得、そしてチャンスやシャドウと再会したりする。またチャンスは、空腹を満たすためサシーから漁を、シャドウから獲物の狩を学んだりもする。

 一方、数日たって牧場の見回りから帰ったケイトは3匹の失踪に気がつきピーター達に連絡する。こうして初めてピーターの家族が三匹が行方不明になったことを知り、ピーターはボブを「あんたのせいだ!」と言って詰るのである。ボブは、忙しい仕事の合間を縫って”ペットを捜しています”というビラを作り町中に貼り、ピーターは警察に相談したりする。

さて、家路への旅を続ける3匹は途中の山中で迷子の女の子に遭遇し、彼女を助けて夜を過ごす。一夜が明けると、女の子を捜す捜索隊の呼ぶ声に気がつき、女の子のところに捜索隊を導いてくるのだが、その捜索隊の一人がビラで見た3匹だと気づき、一家に連絡を取って保護センターに連れていくが、3匹はそこを野犬収容所と勘違いして再び脱走してしまうのである。しかしついに3匹は、懐かしいサンフランシスコの町を見下ろすところまでたどり着くのである。そして、慎重に家路を急ぐのであるが、腐った木を渡ろうとしたシャドウが不運にも深い穴に転落してしまい、チャンスとサシーは必死の救助を試みるのである。そしてどのくらい時間がたったのか。三匹達がきっと戻ってくることを信じて家で待っているピーターの家族の下に、まずチャンスの吠える声が聞こえ、そしてサシーが続き、また遅れてシャドウまでも帰ってきたのである。

 最後にチャンスが言う。「家の中に入るとき、僕は不思議な感覚を味わった−”家族がいる”と。今の僕には分かる。献身や友情やー、愛さえもがー、おセンチじゃないんだ。ついに、生まれて初めて、僕に家ができた」と。

 この映画は、三匹の動物達の冒険の旅の物語であることはまぎれもないが、しかしまた家族の物語でもあろう。三匹たちは、遭遇した様々な困難に力を合わせて立ち向かい切り抜けていくことで、お互いの信頼と絆を強めていく。三匹が帰ってくるのを信じて家で待っているとき、子供達が始めてボブを”パパ”と呼ぶのだが、このことから分かるように新しく家族となったこの一家も、動物達の失踪という問題に直面したことによって、より深く信頼しあう家族というものを作り上げたのであろう。特筆すべき動物達の名演技に素直に感動し、優しい気持ちになれる作品である



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