許されざる者 アメリカ(1952)
監督
 ジョン・ヒューストン

音楽
 ディミトリ・ティオムキン

[出演]
 バート・ランカスター
 オードリー・ヘップバーン
 オーディ・マーフィー
 邦題が『許されざる者』となっている映画は、クリント・イーストウッドの作品と、我が永遠の女優であるオードリー・ヘップバーンのこの作品がある。正確には、クリント・イーストウッドの作品をリメイクした渡部謙の作品もあるので、三作品となる。

 英語の原題は、イーストウッドの映画では”Unforgiven”であるが、オードリーの作品では、”TheUnforgiven”となっている。”The”が冠せられるかどうかということは、たぶん英語を母国語とする人々には、深い大きな意味があると思われるが、残念がら英語を母国語としない者には違いがよくわからない。

 映画の舞台はテキサスであり、そして背景となる時代はアメリカにおける西部開拓時代で、まだ先住民であるアメリカ・インディアンと入植者達とが相争い、戦闘を繰り返していた頃である。

 ザカリー家は、長男のベン(バート・ランカスター)を中心に、次男のキャッシュ、3男のアンディ、母親(リリアン・ギッシュ)、そして養女レイチェル(オードリー・ヘップバーン)の5人で牧場を営み、同様に牧場を営むローリンズ家と強力し、インディアンのカイオア族と激しい戦いを繰り返していたのだが、今は平穏な時を迎えていた。

 しかし、この平和を脅かすようなことが起きてくる。どこからともなくケルシーという男が現れ、「神の言葉を伝え、復讐を行う」と宣告し、『レイチェルは、インディアンの娘だ』ということを触れ回り、カイオア族にも、そのことを伝えたのである。

 なぜケルシーがザカリー一家に対する憎しみを募らせ、復讐に燃えるのかは、映画の展開と共に次第に明らかになる。開拓の入植者達がカイオア族に大虐殺を受けたことがあった。その仕返しに、ケルシーは、既に亡くなっているザカリー家の父、ウィリアム・ザカリー達とカイオア族の居住地を襲い、カイオア族の皆殺しを計った。そのときウィリアム・ザカリーによって助けられ、育てられたのがレイチェルだったのである。

 そしてケルシーの言によれば、後にカイオワ族によってケルシーの息子が捕らえた時、ケルシーは、レイチェルと引き換えに息子をとり戻すとウィリアム・ザカリーに頼んだのだが断られ、そのためケルシーの息子は、カイオワ族によって殺されてしまった。以来、ケルシーはザカリー家を呪い続けていたのである。

 ケルシーはまた、カイオア族の若い酋長に、『レイチェルはカイオア族であるだけではなく、妹である』と話してしまていた。そのため若き酋長は、レイチェルを取り戻そうとするのだが、その要求をベンは断固として拒否してしまう。そのためローリンズ家のチャーリーがカイオア族に殺されてしまい、ローリンズ家の協力を全く得られないという状況で、レイチェルを取り返そうとするカイオア族に対して、ザカリー一家のみのが戦うことになるのであった。

 母を失い、そして、レイチェルに「妹!」と呼びかけた若い酋長をさえ、レイチェル自身が撃ってしまわなければならない激しい戦いが終わった。残された兄弟と、ベンと生きていくことを決意したレイチェル達は、彼らの今後を暗示するかのような雁の群れが飛び去っていく空を見つめるのであった。

 この映画を最初に見たのは、日本で公開された時である。その時には、『許されざる者』とは、たぶん兄かも知れないカイオア族の若き酋長を銃で撃ち、ベンとの愛を選んだ、オードリー・ヘップバーン演じたレイチェルなのであろうと思った。しかし、その後のDVD等の普及から何度か見直すことができるようになると、単にレイチェルのみが『許されざる者』なのだろうかという疑問を強くするのである。

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